
企業の機密情報や個人情報の漏洩は、事業継続を脅かす重大なリスクです。特に、クラウドサービスの利用増加やリモートワークの普及により、情報が組織の境界外に出やすくなった現代では、従来のセキュリティ対策だけでは十分とは言えなくなっています。
本記事のテーマである DLP(Data Loss Prevention:データ損失防止)は、まさにこのような環境下で、機密データが外部に流出するのを未然に防ぐための強力なセキュリティソリューションです。
この記事では、DLPの基礎知識から、DLPが情報を判別する仕組み、主要な機能、そして企業がDLPを導入することで得られる具体的なメリットまでを、わかりやすく解説します。
DLPとは
DLPは「Data Loss Prevention」の略で、日本語では「データ損失防止」または「情報漏洩対策」と訳されます。組織の機密情報や個人情報などの重要なデータが、外部へ流出したり、意図せず失われたりすることを防ぐためのセキュリティソリューションです。
DLPの最大の役割は、「内部からの情報漏洩」を防ぐことにあります。
DLPが注目されている背景
DLPが近年特に注目されている背景には、企業を取り巻くIT環境の大きな変化があります。
IT環境の変化と境界の消失
新型コロナウイルスの感染拡大を契機としたリモートワークの普及や、AI・自動化といったデジタルテクノロジーの進展により、データが社内ネットワークという「境界内」だけでなく、クラウドサービスや個人のPCなど「境界外」で利用される機会が格段に増加しました。
ヒューマンエラーと内部不正への対策
情報漏洩は、外部からのサイバー攻撃だけでなく、内部からの持ち出しや誤操作などのヒューマンエラーによっても多く引き起こされます。従業員の不注意や意図しない操作によるデータ流出を防ぐには、データそのものを監視するDLPが必要とされています。
コンプライアンスの強化
企業の情報資産管理の重要性は国際的に高まっており、コンプライアンス順守のためにも、情報資産が適切に管理されていることが求められています。
DLPの仕組み
DLPソリューションが機密データを正確に認識し、その流出を防ぐために用いる主な判別方法には、以下の2つがあります。
特定のキーワードや正規表現による判別
最も基本的な判別方法の一つが、データ内に含まれる特定の文字列やパターンを検出する方式です。
・キーワード: 「特許申請中」「極秘」「顧客名簿」といった、企業が機密情報に付与する特定のキーワードをあらかじめ設定し、監視します。
・正規表現: クレジットカード番号、マイナンバー、メールアドレスなど、特定の桁数やフォーマットを持つ情報をパターンとして登録し、検出します。
フィンガープリントによる判別
特定のファイルの内容を、一意の「指紋」(フィンガープリント、またはハッシュ値)としてシステムに登録し、流出しようとしているデータがこれと一致するかを照合する方式です。
この方法の利点は、内容の一部変更やファイル名の変更があっても、元の機密データと高い精度で同一性を判別できる点です。原本の内容をコピー&ペーストした文書であっても検出可能です。
DLPと従来の情報漏洩対策との違い
従来の情報漏洩対策とDLPの大きな違いは、「何を」「どのように」監視・保護するかという点にあります。
| 比較項目 | DLP(データ損失防止) | 従来の情報漏洩対策 |
|---|---|---|
| 保護対象 | データそのもの(ファイルの内容) | データの「入れ物」や「経路」 |
| 監視対象 | データの内容 | 端末の状態、ログ、デバイス |
| 防御の仕組み | 流出をリアルタイムで自動阻止 | 利用制限、操作ログの取得 |
IT資産管理ツールなどはUSBメモリ等の「経路」を制限しますが、内容が機密かどうかは判断できません。これに対し、DLPは内容自体を判別し、流出を自動的に阻止します。
DLPの基本機能
DLPソリューションは、機密情報が流出する可能性のある様々な経路をカバーするために、複数の機能を提供します。
流出経路を全方位でカバー
・デバイス制御機能: USBメモリやスマートフォンへの書き出しを制御し、意図的な持ち出しを防ぎます。
・コンテンツ監視機能: ネットワークを流れるデータや保存データをリアルタイムで監視・チェックします。
・印刷・コピー制限機能: スクリーンショット、印刷、コピー&ペーストを制限し、物理的な持ち出しを防ぎます。
・メールセキュリティ機能: 送信内容や添付ファイルをチェックし、送信停止や暗号化を自動で行います。
・Webセキュリティ機能: WebメールやSNS、クラウドへのアップロードを監視・ブロックします。
DLPを導入するメリット
DLPを導入することで、従来の対策だけでは難しかった多くのメリットを享受できます。
リスクの未然防止と運用の効率化
・リアルタイムでの異常検知: インシデント発生の瞬間に操作を自動阻止し、事後対応ではなく未然防止を実現します。
・ヒューマンエラーの防止: 不注意による誤操作をシステムが防ぐため、人の注意力に頼らない安全性を確保できます。
・管理負荷とコストの削減: ルールに基づく自動制御により、監視負荷を軽減。漏洩発生時の莫大な損害賠償や信用失墜コストを回避する「保険」としても機能します。
DLP導入時の注意点
導入効果を最大限に引き出すために、以下のポイントを確認しましょう。
コストと提供形態の選定
費用対効果を慎重に見極め、補助金の活用も検討しましょう。また、リモートワークが多い場合はクラウド型(CASB一体型)、端末を直接制御したい場合はエンドポイント型など、自社の環境に最適な形態を選ぶ必要があります。
サポート体制の確認
設定や運用ルールが複雑になりがちなため、ベンダーによる導入支援やトレーニング体制が充実しているか、事前に確認することが円滑な運用の鍵となります。
まとめ
DLP(Data Loss Prevention)は、現代の企業が直面する情報漏洩リスクに対し、データそのものを監視してリアルタイムで流出を阻止する、極めて効果的なソリューションです。
伊藤忠テクノソリューションズ株式会社では、クラウドとWEBのセキュリティ統合プラットフォーム「Netskope」を提供しています。クラウド環境でのデータ保護に課題を感じている場合は、Netskopeの導入をぜひご検討ください。













